珍愚庵の提案

珍愚庵の提案

珍愚庵の提案 024

登山口へ向かうバスの不思議

私は若かった頃から登山が好きである。特に丹沢はアクセスが良く、標高も手ごろなので日帰りで行って来ることが多い。小田急の伊勢原、秦野、渋沢、新松田駅からバスを利用する。

秦野駅からヤビツ峠行きのバスは、乗車時間が約40分と長く、歩行時間を短縮する上でとても便利である。たいてい午前8時18分発を利用するのだが、時々不思議な現象が起こる。

駅前のバス乗り場には、8時前から乗客が並ぶ。私は行列の人数を数え、座って行けるかどうか予測する。このとき、人の数ではなく、荷物の数を数える。一般の市内バスと同じ車両なので、座れるのは20人程度である。だから自分の前にいるのが15人程度なら、座席にありつけると期待できる。

さて、いざバスに乗り込む段になると、不思議不思議、私の前の人数がかなり増えているのだ。座席が埋まって、終点まで立って行ったこともある。

あるとき、この不思議を解明しようと、バスが来るまでずっと待ち行列を見ていた。そして解った。バス発車時刻の少し前に到着する電車がある。この電車の客の何名かが、バス待ちの行列に割り込んだのだ。

それは、中高年のグループであった。予めグループの一部が早めに来て列に並ぶ。残りのメンバーが到着すると、どうぞとばかりに順番を譲ってあげる。続いてその人自身も乗車する。この手法を同じ場所で2回確認した。

このような行為に抗議する人を、私はこの場所でまだ見たことがない。不思議にも登山者たちは粛々とバスに乗り、終点で静かにバスを降りる。そして、それぞれの目指す山に向かってうれしそうに歩き出す。

提案は、あえて書きません。


前の提案 <<        HOME        >> 次の提案


柿・どんぐり・銀杏
©2010 by Chinguan   All rights reserved.   メール送信
inserted by FC2 system